複雑・深刻化する社会問題を背景に、
その相談や援助にたずさわる「社会福祉士」の需要も高まってきています。
一方で毎年行われる国家試験の合格率は約30%をやや下回っているという現状があります。
これから社会福祉士を目指そうとする方なら、この合格率の低さに尻りごみしてしまいそうですよね。
社会福祉士の試験内容はそれほどまでに難しいのでしょうか?
私自身も社会福祉士の資格取得を考える一主婦であり、その真相は気になるところです。
≫≫国家試験の難易度についての記事はこちら。
この記事では社会福祉士の合格率が低いとされる理由と、実際にはどういう人が合格しているのかを考えてみました。
これから社会福祉士を目指す方の参考になれば幸いです。
出典:公益財団法人 社会福祉振興・試験センターHP
この記事に書かれていること
社会福祉士の合格率は本当に低いの?
公開されている社会福祉士の合格率のデータを、過去5年分さかのぼってみましょう。
引用:社会福祉士合格率の推移
数字で見てみるとこんな感じです↓
平成25年・第25回 18.8% (42,841/ 8,058)人
平成26年・第26回 27.5% (12,540/45,578)人
平成27年・第27回 27.0% (12,181/45,187)人
平成28年・第28回 26.2% (11,735/44,764)人
平成29年・第29回 25.8% (11,828/45,849)人
受験者数は平均して4万5千人程度、合格率は毎年30%を下回っていることがわかります。
また他の福祉系の資格と比べてみると、社会福祉士の合格率は圧倒的に低いと言えます。
平成29年度のデータより、合格率の違いを見てみましょう。
・社会福祉士 25.8%
・介護福祉士 72.1%
・精神保健福祉士 62.0%
共通科目を持つ精神保健福祉士と比べると、2倍以上の差があることがわかります。
合格率が低い理由は4つ
毎年4万人もの方が受験する資格ですが、どうして3割弱の方しか合格できないのでしょうか?
その理由は大きく4つ挙げられます。
- 出題範囲が広い!!
- 勉強時間の不足
- モチベーションの低さ
- 当日に実力を発揮できない
ひとつずつ詳しくご紹介していきますね。
理由1. 出題範囲が広い
社会福祉士の国家試験では、その出題範囲の科目は18科目とされています。
(社会福祉士の試験科目一覧)
[1] 人体の構造と機能及び疾病
[2] 心理学理論と心理的支援
[3] 社会理論と社会システム
[4] 現代社会と福祉
[5] 地域福祉の理論と方法
[6] 福祉行財政と福祉計画
[7] 社会保障
[8] 障害者に対する支援と障害者自立支援制度
[9] 低所得者に対する支援と生活保護制度
[10] 保健医療サービス
[11] 権利擁護と成年後見制度
[12] 社会調査の基礎
[13] 相談援助の基盤と専門職
[14] 相談援助の理論と方法
[15] 福祉サービスの組織と経営
[16] 高齢者に対する支援と介護保険制度
[17] 児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度
[18] 就労支援サービス、更生保護制度
これは福祉系資格の試験では一番の科目数の多さです。
ちなみに他の福祉系資格では、以下の通りです。
- 介護福祉士は11科目
- 精神保健福祉士は16科目(そのうち11科目は社会福祉士と共通)
さらに合格基準をみてみると、
①全150問中60%以上の得点をとること
②18科目全てにおいての得点があること
が必要とされています。
例えば、総得点が8割を超えていても、0点の科目が一つでもあれば不合格というわけです。
つまりどの科目でもまんべんなく得点をとることが必要なのです。
出題範囲が広いと全ての範囲を学習するための時間も増えますし、なかでも得意・不得意な分野が別れてしまいがち。
得意科目で不得意科目をカバーすることができないことが、社会福祉士の試験の難しさといえるでしょう。
ちなみに出題内容としては、社会福祉に関する幅広い基礎知識を求められる傾向が強く、難易度自体はそれほど高くないと言われています。
理由2.勉強時間の不足
資格取得をめざすならば、勉強時間を確保することが大切ですよね。
社会福祉士を受験される方の年齢層を見てみると、少しその背景が見えてきた気がします。
勉強に専念できる生活環境か?
引用:年齢別受験者数(H29年度)
平成29年度のデータをみると、社会福祉士の合格者は50代以上の方が1割と、幅広い年齢層が特徴としてあげられます。
受験者の年齢別のデータをみたいところではありますが…。
全体を見てみても、合格者の割合は30歳以下と31歳以上でおよそ半分に分かれていますね。
30歳以下の方には、資格取得のために専門学校や福祉系大学で学んでいる若い学生の方も多く含まれるでしょう。
一方で残り半数近くの方には、働きながら試験勉強をしている社会人学生も多いのではないでしょうか。
年齢があがるにしたがって、社会的な役割も変わっていきます。
多忙な業務や子育て、親の介護など、生活環境によって勉強時間を確保することが難しい状況も増えることが考えられます。
資格取得に実務経験?
社会福祉士の受験資格には、12通りの取得ルートがあることをご存知ですか?
引用:資格取得ルート図
上の図を大きく3つにわけると、次のようになります。
- 大学等で指定科目を履修する
- 短大等で指定科目を履修して実務1~2年を経験する
- 高卒等で実務経験を経て養成施設を修了する
このように社会福祉士の受験資格を手にするまでには、実務経験を必要とするルートも多いことがわかります。
つまり実際に働いているということですよね。
一度退職して学業に専念できる方もいますが、実務をこなしながら指定科目の履修のために通信制や定時制のクラスを利用する方も多くいらっしゃいます。
≫≫社会福祉士の資格取得をお得に!ハローワークの制度を5つご紹介
そうなると忙しい日常の中で、必要科目の履修と国家試験の勉強を同時にこなさなければいけません。
このように社会福祉士を受験する方の中には、少なくとも勉強に専念できる方ばかりではなく、仕事や家庭を持ちながら受験する方が多いといえます。
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ダブル受験で勉強時間がない
社会福祉士は、同じく福祉系の国家資格である精神保健福祉士とのダブル受験が可能です。
11科目の共通科目があるので、どうせ勉強するならと2資格取得を志す方も多くいらっしゃるようです。
共通していない科目ももちろんありますので、効率的に勉強をすすめる必要がでてきますよね。
同時合格にはそれなりの自己管理能力が問われます。
資格取得を目指して受験するも、勉強時間が取れずに理解が浅いまま試験に臨み、合格できないケースも少なくはないでしょう。
同時受験をして、範囲の広い社会福祉士の方が不合格だったという方を知っています。
理由3.モチベーションの低さ
これまで勉強時間の不足について話してきましたが、勉強時間があれば合格できるのかといえば、そうでもありません。
そもそもの本人のやる気の問題も多く関わってきます。
専門学校の講師の方に聞いたところ、学生さんの中にもモチベーションを維持できない方は一定数いらっしゃるようです。
そもそも社会経験のない学生の場合だと、社会福祉士の資格をとったあとの将来像が明確でない場合も多く、やる気につながらないケースも。
実は私自身もこのタイプです。
社会福祉主事の任用資格を持ってはいますが、学生時代には対人援助についてピンとこず、モチベーションも保てず、社会福祉士の受験はしませんでした。
就職・退職・妊娠・出産・子育てなどなど、いろいろな経験をして改めて社会保障の必要性や社会福祉士の魅力を再認識しました。
一方で、学生生活の中で明確な目的意識をもって受験勉強に励む方や、忙しい中でも時間を作って資格取得を目指す社会人の方もたくさんいらっしゃいます。
要するに、専業の学生であれ社会人であれ、資格取得の強い意志をもち、それを維持できるかどうかが合格に大きく関わってきます。
受験者の中には、記念受験だったり、なんとなく受験資格があるから受験してみたという方もいらっしゃいますので、全員が全力を振り絞った上での合格率ではないということは頭に入れておくとよいと思います。
4.当日に実力を発揮できない人も
これは資格試験全般に言えることですが、「これをしてしまうと完全に不合格」というものがいくつかあります。
たとえば、次のようなものが挙げられます。
- 受験番号や名前の記入漏れ
- マークシートの解答ミス(記入欄がずれるなど)
- 試験当日の欠席
- ゼロ点科目の発生
- 風邪や腹痛などの体調不良
このような場合には、せっかく時間をかけて勉強してきても合格をすることはできません。
実にもったいないですね。
また社会福祉士は受験者の年代も幅広いのが特徴です。
ご自身の都合だけでなく、仕事やご家族の都合によってやむを得ず当日の受験を自体するケースも考えられます。
試験当日に実力を発揮できないことも、少なからず合格率を下げる原因になってしまいます。
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社会福祉士試験に合格するのはこんな人!!
これまで合格率を下げている原因を考えていくうちに、どんな人なら社会福祉士に合格できるのかが見えてきました。
・社会福祉士に本気でなりたい
・資格取得のための勉強時間が確保できる
・少なくとも勉強するための環境がある
当たり前といえば、当たり前かもしれませんね。
家族や周囲の協力も仰ぎつつ、コツコツと勉強を続けていく気持ちや時間を保つことがポイントといえます。
さいごに ~資格取得を目指すには~
社会福祉士の国家試験は決して、恐ろしく難易度の高いものではないようです。
その合格率の低さの理由としては、次のことが考えられます。
- 出題範囲が広い!!
- 勉強時間の不足
- モチベーションの低さ
- 当日に実力を発揮できない
つまりこれから資格取得を目指す方は、
- やる気を維持すること
- 勉強時間を確保すること
- 環境を整えること
これらのことを意識して効率的に学習を進めていくことができれば、合格は夢ではないといえます。
国家試験の合格率の低さは、あくまでも受験者の全体の数字であり、全員が全力を出し切って挑んだ結果ではありません。
尻込みする必要はなさそうです。
社会でもその活躍が期待されている社会福祉士。
できるだけ多くの方が夢を実現されることを祈っています。
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そんな時に環境をガラリと変えて、勉強に専念するのも一つの方法。
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